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経審解体新書その6~(Y点)x3総資本売上総利益率

経審P点におけるY点x3総資本売上総利益率の位置づけ

 経審P点総合評定値の中で経営状況分析Y点は20%の比率を占めます。

このY点(20%)とその他社会性W点(15%)は中小建設会社にとって特に影響を受けやすく、優先的に取り組むのがベターだということを経審解体新書その3 ~経営状況分析 Y点について~ でも述べさせていただいております。

経営状況分析Y点は今回のx 3総資本売上総利益率を初め、ほとんどの評価指標が数字のボリュームではなく比率(や期間)で評価されますので、大企業であれ中小零細企業であれ同じ土俵で戦えますし、中小建設会社の間でも大きく差が付いていきますので、内容を理解して積極的に改善に取り組んでいただければ幸いです。

x 3総資本売上総利益率は経営状況分析Y点に対する影響度は14%と非常に重要な評価指標です。

会社が調達した総資本(=自己資本+負債総額(他人資本))を活用して、上手に(売上総)利益を獲得できているのか?その巧拙を評価する指標です。

この指標の数値が大きいほど、効率の良い資本活用でうまく利益を出していますねという具合に高評価になります。


イメージ確認のためY点の算出式を再掲しますが(覚えたりする必要は全くありません)、

経営状況分析Y点167.3×+583

=-0.4650×x1 -0.0508×x2 +0.0264×x3 +0.0277×x4+0.0011×x5 +0.0089×x6 +0.0818×x7 +0.0172×x8 + 0.1906

x 3総資本売上総利益率の傾き、変化率は+0.0264×167.3+4.41672です。

x 3総資本売上総利益率の上限値は63.6 下限値は6.5なので、Y点に対する傾き、変化率+4.41672と掛け算すると、Y点換算で上限値280.90339~下限値28.70868、上限値から下限値までの評点幅は252.19471となり、Y点8指標それぞれの評点幅総合計(1801.7812)の14%を占め、中小建設会社にとってはx1純支払利息比率の次、2番目に注目していただきたい評価指標になります。


評点幅の0%~100%の中で、自社が現時点で何%の割合に到達しているのかを表す「得点率」が現在どこにあるのかにもよりますが、得点率が100%から離れていればいるほど改善の余地は大きく、Y点にインパクトを大きく与えることのできる可能性があるというわけです。


そして、こちらの記事では、経審の経営状況分析(Y点)x3総資本売上総利益率について解説する流れで、関連する知っておいて損のない類似の財務指標についてもお役立ち情報としてご紹介させていただきます。

経審Y点x3総資本売上総利益率 改善メソッド

 x3総資本売上総利益率=売上総利益/総資本×100 の式で計算されます。

Y点に換算するには、変化率4.41672とx3総資本売上総利益率を掛け算します。

変化率、傾きがプラスなので、x3総資本売上総利益率は数字が大きいほど評価が上がります。

できるだけx3総資本売上総利益率の数字を大きくするには、分母の総資本を小さく、そして分子の売上総利益が大きくなるようにしなければなりません。
(「できるだけ小さい資本を使って、より多くの利益を獲得」できる会社の評価が高くなる計算式ですね。)

分子の売上総利益を大きくする

まずは式の分子の売上総利益についてみていきましょう。

売上総利益は損益計算書(P/L)の売上高から売上原価を引いて計算し、人件費や設備投資、広告宣伝費初め様々なコスト(販管費)を支払っていくための原資になる利益の大元、会社成長のための源泉ですね。

売上総利益は粗利益と呼ばれたりもします。

この売上総利益をしっかり確保することによって、例えば良い人材の採用や生産性をより高めるための設備投資など、つまりは未来のために積極的な投資をすることができるようになるのです。

業種によって違いますが、小売業などでは売上総利益は生産性について語られるときによく出てくる付加価値に似た概念として捉えられることがありますね。

ただし、建設業の場合は完成工事高(建設工事の売上高)から完成工事原価(建設業の売上原価)を差し引き完成工事総利益(建設業の売上総利益)を計算しますが、完成工事原価は「材料費・労務費・外注費・その他経費」で構成され、労務費やその他経費の中には付加価値に相当する内容も含まれていますので完成工事総利益に関しては付加価値とイコールということではありません。

この売上総利益を増やすためには売上を伸ばすか、売上原価を減らすかのいずれかです。

工事契約ごとにきちんと個別原価計算ができているかどうかもとても大事になりますね。

つまり、個別に原価を把握することで適正な粗利を確保できないような工事を受注しないようにすることも、そもそも論としてとても重要になってきます。

大事なリソースである自社のヒト・モノ・カネをできるだけ適正粗利の確保できる現場に振り分けていくことこそが最重要課題だと申し上げても過言ではないでしょう。


そして、まずは売上原価(完成工事原価)を減らしていくには、材料費・労務費・外注費・その他経費それぞれの内容を個別に検討し、例えば外注費については縁故関係等で協力業者などに惰性で発注するのではなく、ある程度緊張感を持った関係性の構築も時には必要になってくることでしょう。

建設業の売上原価、完成工事原価についてはなかなかどうして特殊な事情を抱えているように思いますので少しだけその点についてお話しします。

Y点算出のため登録経営状況分析機関に提出する経審用財務諸表は、管轄の建設業許可行政庁に届け出る決算届(許可行政庁によって呼称は様々です。事業年度終了届や決算変更届など)と同じです。

詳細については別の記事に譲ることとしますが、決算届の財務諸表は基本、法人税確定申告書の決算書をベースに作成されます。

当事務所では延べ数千社の決算届を作成代行してきましたが、顧問の会計事務所ごとに税務署提出用決算書の形式はまちまちで統一されているものではありません。

会計事務所ごとにやり方が全然違いますし、会計原則などに忠実に作成されている決算書もあれば、とりあえず税務申告目的のみ(?)に作成されているような決算書に至るまで様々な形式のものがあります。

中には、売上原価は0円、全ての工事原価を販売費及び一般管理費に含めてしまっている形式の損益計算書もレアケースではありますが見受けられます。

そこまでは極端にしても、税務申告用として作成される決算書類は建設業法上求められる財務諸表とは性質が異なっておりますので、当事務所では会社やその顧問の会計事務所と相談しつつ、経審で求められている建設業法に則った適正な財務諸表になるように数字を組み換え等して決算届の作成をしていきます。

そこには、会社自身で作成するにせよ行政書士に依頼するにせよ、そんな財務諸表の組み換えの際に経審的視点でいろいろと工夫なり改善できる余地があるのです。

この件について書き始めると、一つの長い記事が出来上がるくらいのボリュームになってしまいますのでまた別の機会に改めますが、自社でやるにしても行政書士に依頼するにしても、この辺りの知識の豊富な方が関わらないと思いがけない良くない顛末になり得るので注意が必要です。

どんなことに注意すれば良いかと、かなりざっくりとではありますが少しだけ申し上げますと、完成工事原価の中でも特に労務費とその他経費について、損益計算書(P/L)販管費に含めるのか完成工事原価なのか、どちらにどのような基準で配賦すべきなのか等、それは建設業法として矛盾する内容にはなってはいないか?など等、気を配るべき要素が多分に含まれています。

次に、売上についてですが、ここでの売上高は完成工事高のことではなく、会社全体としての売上、つまり、完成工事高+兼業売上高のことを指します。

中小建設会社の完成工事高については工事の完成引き渡し時に計上する工事完成基準の採用がほとんどですが、「収益認識に関する会計基準」(これまでは「工事契約に関する会計基準」に則った工事進行基準)を適用した方が当該期の売上積み増し計上に繋がるなら、そうすることによるデメリットと併せて顧問税理士と相談し検討してみても良いかもしれません。

売上を伸ばしていくことに関して、他の評価指標との兼ね合いもありますので、利益を無視していたずらに売上を取りに行っても総合的に経審としては良くはありませんし、適正な利益率の工事をこつこつと積み重ねていくしかないですよね。

分母の総資本を小さくする

x3総資本売上総利益率では、売上高(完成工事高)は大きく売上原価(完成工事原価)と総資本は小さくなる方が評点は上がるということでしたが、最後に、分母の総資本(=総資産)を小さくすることについて考えていきましょう。

総資本(総資産)を小さくするということは、貸借対照表(B/S)から余分な資産や負債等を省いていき、総資産や負債純資産合計を圧縮していくことです。

貸借対照表(B/S)を圧縮するには、シンプルに申し上げると、キャッシュを生まない資産については処分し、その得たキャッシュで借入金など他人資本(負債)を返済することです。

まずは遊休資産や有価証券の処分をする。固定資産もセール&リースバック(売却した上で売却先から賃借)等で圧縮や流動化するなどです。

しかし、金のなる木まで処分してはダメです。

儲からないから負債と資本を返すのみでは経営規模が縮小するだけになってしまいます。

ダイエットと同じでやせすぎて健康を害しては本末転倒になります。

つまり、ROAを向上させるには、売上債権や棚卸資産など運転資金を圧縮させ建物や設備など固定資産を適正化するといったように利益を生み出すのに必要な資産と必要でない資産を選別するために吟味します。

そして、売上高を成長させること、コスト構造を効率化し利益を成長させるとう視点が大事になります。

P/LとB/Sの全てに改善の意識を向けることになりますね。

総資本売上総利益率もう少し深掘り

 この記事で取り上げている経審Y点 x3総資本売上総利益率について、財務分析の観点からもう少し掘り下げてみていきましょう。

経審の経営状況分析では資本利益率ROAとしてx3総資本売上総利益率が用いられていますが、一般的に財務分析では資本利益率として分子に売上総利益を用いることはありません。

資本利益率は、何らかの利益概念を資本の概念で割って計算しますが、分子に営業利益や経常利益、純利益が使われることが多いです。

資本の概念としては、総資本や経営資本、自己資本などが良く使われます。

建設業専業の会社ですとこの売上総利益は完成工事高(売上高)から完成工事原価(売上原価)を引いたものになります。

売上高(完成工事高)-売上原価(完成工事原価)=売上総利益(完成工事総利益)
売上総利益―販管費=営業利益

売上高から営業利益に至るまでには売上原価販管費という2段階の営業費用が差し引かれます。


売上原価に入るか、販管費に相当するのか曖昧な費用(各社の裁量に委ねられている)もあるように思います。

売上原価or販管費?明確に費用を配賦することは難しいですし、個人的には分子には売上総利益ではなく営業利益を使用する方が公平性が保たれるのになと感じております。

ただ、建設業という独特な業種ゆえに、工事原価を意識して粗利率に拘った経営をすることを重要視してほしいというメッセージが込められているのかもしれません。

分母の総資本(=総資産)は自己資本(株主)+負債(借入等)のB/S貸方合計(=借方合計)ですから、分子に売上総利益を使うことは利息の支払いや金融資産からの収益が含まれていないため分母と分子の概念が一致していない様に思います。

一般的にはROA資本利益率の分子には営業利益、経常利益、純利益の3つが用いられることが多いですが、理論的には支払利息控除前・法人税控除前利益(EBIT)≒「経常利益+支払利息」がROAの利益概念として最も整合性が取れていると思います。

ROA(総資産利益率Return On Assets)は保有する総資本(=総資産)に対してどれだけ利益を生み出したのか評価する最も基本的な投資収益性指標です。

1,000万円の資産で100万円の利益ならROA10%ですが、1億円の資産を使って100万円の利益しか生み出せないならROA1%という計算になります。

貸借対照表の貸方の総資本は株主からの出資(資本)や金融機関等からの負債で構成されています。

株主も銀行もボランティアでお金を出してくれているわけはなく、何らかのリターンを求めての行動なのは言うまでもありません。

会社はこうして預かった資金を貸借対照表の借方の総資産を経由しそれらを運用して利益を上げるよう努めます。

どんな会社でもこの流れから外れることは出来ません

なので、ROA総資本利益率は全ての会社が無視できない重要な財務評価指標であると思います。

デュポン社が開発したデュポンシステムと呼ばれるROAの展開式が会社の総合力を測定する上で重要なので簡単に示しておきます。

ご興味ある方はご自身で深掘りして自社の経営に活用してみてください。

ROA(総資本利益率)=利益/総資本

※総資本は前期末と当期末(審査基準日現在)の2期平均を使います。
経審では3,000万円に満たない場合は3,000万円とみなします。これは、固定資産など持たないペーパーカンパニーなどが高評点になるのを防ぐための施策です。

利益/総資本=「利益/売上高(収益性)」×「売上高/総資産(資産効率性)」に展開することができます。

経審では、ROA=売上高総利益率×総資産回転率という展開式になりますね。

俗にいう粗利率の高い工事の受注や(工事の採算性)、設備や人的資本等の資産を効率よく活用し売上を造ることを意識しましょうということになるのでしょうか。

こちらでは、折角、経審 経営状況分析で少し特殊ではありますがx3総資本売上総利益率について理解するわけなので、もう一歩踏み込んで一般的に財務分析で活用されている類似の指標についても学び、今後の経営に活かしていただければ幸いです。


・率の経営に拘る/資本の効率を上げる経営について

詳細は別の記事などに譲りますが、ROAの他にはROE、ROIC、FCF、EVAなどの有名な経営指標があり、売上や利益など金額、事業規模の拡大だけでなく、経営の効率にこだわった評価指標の活用が現在主流になっております。

これら評価指標の特徴として、B/S貸借対照表とP/L損益計算書の両方を使った投資家目線に立った収益性を把握できる点が優れています。

年間フロー情報で成り立つキャッシュフローや利益等、今年稼いでいればOK、今年成長していればOKと特定期間のフローにのみ着眼するのではなく、これらのためにどれだけ投資し、そのために要した資金調達との見合いは?など、そして、フロー(PL)を生み出すためのストック(BS)という視点を重視し稼ぐ力を測ります。

東京証券取引所も昨今、もっとグローバルに投資を呼び込もうとこのような資本コストや企業価値向上、株価を意識した経営を上場企業に強く要請するようになってきています。

折角なのでもう1つ、類似の有名な財務指標としてROE(自己資本当期純利益率)を紹介させていただきます。

当期純利益を自己資本で割って求めます。

株主の視点に立った投資効率の指標であり、上場している会社は特にこれを高めていかなければなりません。

ROEの展開式も会社の総合力を測定する上でとても重要なので簡単に示しておきます。

こちらも興味ある方はご自身で深掘りして自社の経営に活用してみてください。

ROE(当期純利益/自己資本)=「当期純利益/売上高」×「売上高/総資産」×「総資産/自己資本」と展開することができます。

収益性(売上高純利益率)×資産効率性(総資産回転率)×財務レバレッジの3つの要素から総合力を測ることができるのです。

ROEの数字を良くしていくためには、利益率を高めること、出来るだけ小さな資産で売上を稼ぐこと、資金調達で負債を活用することの3つです。

最後の負債活用については、経審にとっては悩ましい問題にはなりますが、あらゆる角度から自社の経営を見つめてみて、バランスの良い落としどころを探るしかありません。

このROE展開式の3要素は経審でも類似の指標で評価できます。

収益性や資産効率性は売上高経常利益率や総資本売上総利益率から、財務レバレッジは自己資本比率の逆数になりますので、3つ合わせてROE展開式に近い評価がなされているとも言えると思います。


さらに、EBITDAマージンという指標も抑えておくと良いでしょう。

EBITDA(経審解体新書その2 ~X2 自己資本額および平均利益額~参照)を売上高で割った財務指標です。

営業利益や営業利益率が財務指標としてはメジャーですが、特に設備投資、有形固定資産(または無形固定資産)の占める割合が大きい会社さんは、減価償却費の影響を受けてしまう営業利益や営業利益率よりもEBITDAやEBITDAマージンを使用する意味は大きいと思います。

減価償却費の影響で各年度の評価にブレが生じてしまうので、EBITDA(マージン)を使用することで自社や競合会社、ベンチマークとする会社等の数年間の推移等を把握し目標値を設定したり何らかの対策を打つ目安にします。

金融機関が貸したお金が何かしらの資産に投資されて、そこからどれだけ稼ぐ能力があるのか?
正にEBITDA(マージン)が適した評価指標となるでしょう。


※経営状況分析Y点の8指標もそうですし、経審P点総合評定値のX1・X2・Z・W点もそうですが、各評価指標は他の評価指標と互いに影響を与え合うことがありますので、1指標だけでなくP点総合評定値全体でどういう結論になるのか意識しながら各評価指標の対応を検討していきましょう。

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