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経審解体新書その4(Y点)x1純支払利息比率について

経審P点総合評定値における(Y点)x1純支払利息比率の位置づけ

 経審P点総合評定値の中で経営状況分析Y点は20%の比率を占めます。


このY点(20%)とその他社会性W点(15%)は中小建設会社にとって特に影響を受けやすく、優先的に取り組むのがベターだということを前記事 経審解体新書その3 ~経営状況分析 Y点について~ でも述べさせていただきました。


経営状況分析Y点は今回の記事のx1純支払利息比率を初め、ほとんどの評価指標が数字のボリュームではなく比率で評価されますので、大企業であれ中小零細企業であれ同じ土俵で戦えますし中小建設会社の間でも大きく差が付いていきますので、内容を理解して積極的に改善に取り組んでいただければと思っております。


x1純支払利息比率は経営状況分析Y点に対する影響度は23.3%、Y点の中で一番インパクトの大きい評価指標です。


イメージ確認のためY点の算出式を再掲しますが(覚えたりする必要は全くありません)、

経営状況分析Y点=167.3×+583

-0.4650×x1 -0.0508×x2 +0.0264×x3 +0.0277×x4+0.0011×x5 +0.0089×x6 +0.0818×x7 +0.0172×x8 + 0.1906


x1純支払利息比率の傾き、変化率は-0.4650×167.3=-77.7945 Y点の8指標の中で最も大きな数字です。


傾き、変化率が-77.7945で一番大きいということは、x1純支払利息比率の数字が少し動くだけで、最もY点に大きな変化をもたらすという意味になります。


数字の前にマイナスが付いていますので、純支払利息比率の数字が大きくなってしまうと、変化率が最も大きいですし、大幅に減点されてしまうと理解しておいてください。


x1純支払利息比率の上限値は△0.3 下限値は5.1なので、Y点に対する傾き、変化率 -77.7945を掛けると、Y点換算で上限値+23.33835 下限値-396.75195 上限値から下限値までの評点幅は420.0903となり、Y点8指標それぞれの上限値から下限値までの評点幅総合計の23.3%を占めるということでした。


評点幅の中で最低点0%~最高点100%まで、自社が現時点で何%の割合に到達しているのかを表す「得点率」が現在どこにあるのかにもよりますが、得点率が100%から離れていればいるほど改善の余地は大きく、Y点にインパクトを大きく与えることのできる可能性があるということになります。
 

x1純支払利息比率 短期的改善メソッド

 x1純支払利息比率=支払利息-受取利息配当金/売上高×100 の式で計算されます。

Y点に換算するには、変化率 -77.7945とx1純支払利息比率を掛け算します。

変化率、傾きがマイナスなので、x1純支払利息比率は数字が小さいほど評価が上がることになります。


できるだけx1純支払利息比率の数字を小さくするには、分母の売上高を大きく、そして、分子の(支払利息-受取利息配当金)は小さくなるようにしなければなりません。


分子の(支払利息-受取利息配当金)を小さくするためには、支払利息は小さく、受取利息配当金はできるだけ大きく、です。


ここで、x1純支払利息比率を短期的に改善することは可能なのか検証してみましょう。


Y点算出のため登録経営状況分析機関に提出する財務諸表は、管轄の許可行政庁に届け出る決算届(許可行政庁によって呼称は様々です。事業年度終了届や決算変更届など)と同じです。


詳細については別の記事に譲ることとしますが、決算届の財務諸表は基本、税務署提出用の決算書をベースに作成されます。


当事務所では延べ数千社の決算届を作成代行してきましたが、顧問の会計事務所ごとに税務署提出用決算書の形式はまちまちで統一されているものではありません。


会計事務所ごとにやり方が全然違いますし、会計原則などに忠実に作成されている決算書もあれば、とりあえず税務申告用(?)に作成されているような決算書に至るまで色々なものがあります。


当事務所では会社や顧問の会計事務所と相談しつつ、建設業法に則った財務諸表に組み換え、決算届の作成をしていきます。


そんな財務諸表の組み換えの際に、経審的視点でいろいろと工夫できる余地があります。


話を元に戻しますが、x1純支払利息比率では、売上高と受取利息配当金は大きく、支払利息は小さくなる方が評点は上がるということでした。


まずは、短期的に支払利息を小さくすることはできないものでしょうか?


(顧問会計事務所からの)法人税確定申告書ファイルに勘定科目内訳明細書が入っているなら確認できるかもしれませんし(入っていても記載されていないこともあるでしょう)、総勘定元帳を確認してみたり、顧問税理士に直接確認してみることも良いかと思いますが、支払利息は純粋に利息の支払い分のみ計上されているかがポイントです。


一番多いのが、性質が似ているということで支払利息割引料勘定として手形割引料が支払利息と併せて記載されていることがあります。

 

支払利息割引料勘定として表記されていない場合でも、手形割引料が含まれていることもあります。

他には、手形割引料と同じように信用保証協会の信用保証料が含まれていることもままあります。


経審的には支払利息の数字は小さいほど良いので、純粋な支払利息の金額のみを残して、顧問の会計事務所のやり方如何によって他の内容がもし含まれているなら、それらは別の適当な勘定科目に振り替えるのが良いでしょう。


特に求められていないものまで含めてしまって、自ら損する必要はありません。

会社や顧問の会計事務所にはその旨お伝えし、翌期からの財務諸表作成に反映させてもらいます。

次に、売上高と受取利息配当金を短期的に大きくすることはできないか?ですが、

こちらは特に中小建設会社にとってはあまり大きく影響を持つお話しではありません。


ここでの売上高は完成工事高のことではなく、会社全体としての売上、つまり、完成工事高+兼業売上高のことを指します。


中小建設会社の完成工事高については工事の完成引き渡し時に計上する工事完成基準の採用がほとんどですが、「収益認識に関する会計基準」(これまでは「工事契約に関する会計基準」に則った工事進行基準)を適用した方が当該期の売上積み増し計上に繋がるなら、そうすることによるデメリットと併せて顧問税理士と相談し検討してみても良いかもしれません。


受取利息配当金については例えば現在、雑収入勘定等の中に自社のスタッフ等への貸付金の利息や、保有する有価証券の配当などが含まれているのでしたら受取利息配当金勘定に振り替えることができるでしょう。
 

 
x1純支払利息比率 中長期的改善メソッド
 

 中長期的に支払利息計上を減らしていくには、どうすればいいのでしょうか?


大きくは2つ、1つ目は借入金を出来るだけ減らしていくこと、もう1つは低金利で借入できるように金融機関と信頼関係を作っていくことです。


経審の評点のことだけを考えるなら無借金経営がベストだと思いますが、そこは社長の経営判断次第だと思います。


私個人の考えとしては、会社によって置かれている経営環境はそれぞれ違いますので一概には言えませんが、経審が関係ない会社であるなら将来のリスクに備えて出来得る限り複数の金融機関から融資を受けて現預金を最大限確保しておくことをお勧めしますが、経審を受ける建設会社にとっては非常に悩ましい問題ではあります。


昨今のコロナ禍など本当に先の読めない複雑な世の中ですから、できるだけ多くの現預金ストックはあった方が良いですし、出来れば複数の金融機関と常日頃から信頼関係を築き、いざというときにスピーディーに対応してもらえるような関係性を作ることが大事なのだろうと思います。


なので、経審を受ける特に中小建設会社に関しては、受注したい公共工事の格付けに必要な経審評点を眺めながら、会社の置かれている経営環境を見極めながら、上手に金融機関とお付き合いしていくという具合に難しい判断になることは否めません。


借入をすることは悪、無借金経営がベストという考え方も根強くあるのでしょうが、私はそうは思いません。


内部留保をこつこつ積み上げてから未来への投資をすることは手堅いやり方なのかもしれませんが、経営にはタイミングもありますし、時期(チャンス)を逃すことにも繋がりかねません。


スピーディーな経営判断が求められる昨今、金融機関からの融資は時間を買う、そして早く経営目的に到達するためにも積極的に上手に活用するべきと日々感じております。


しかし、経審を受ける建設会社にとっては、借入金額が大きくなればなるほど評価は下がってしまいます。


そこは、建設業会社経営には特にバランス感覚が求められる場面なのでしょう。


少し思うところにはなるのですが、経審にとって借入金は少ないほど良いという話しについて、例えばX2自己資本額、Y点のx6自己資本比率 等は税引後利益を毎期積み上げていくことで改善されていきますが、借入金による現預金ストックの余裕を持つことで目下の税金の支払いに臆することなく税引後利益を積み上げて数字を厚くしていくことができると思いますし、そうすることで経審の評価も上がっていくと思うのです。


税引後利益は法人税等を支払った後の残りの利益額なので、税金を払えば払うほど積み上がっていくわけですが、今の現預金に余裕がないと直ちに税金を支払うことが重くなり心の余裕もなくなるわけで、どうしても目先の節税で当面の税金を減らそうという思考になってしまいがちです。


金融機関から可能なタイミングで融資を受けキャッシュリッチな状態で経営者の気持ちに余裕があれば、極度の節税思考に侵されずに盤石な財務体質の強い会社へと進んでいきやすいでしょうし、そうすることで経審でも評点のバランスを保ちつつ公共工事も受注し売上も上がっていくという好循環になっていければ素晴らしいことだと思うわけです。


このテーマについては賛否両論あるでしょうし、中小建設会社にとって頭の痛い問題だと思いますので、別の記事で内容をもう少し掘り下げてみたいと考えております。


次に、売上高と受取利息配当金を中長期的に増やしていくことについては、特筆すべきことはほとんどありません。


他の評価指標との兼ね合いもありますので、利益を無視していたずらに売上を取りに行っても経審トータルとしては良くはありませんし、適正な利益率の工事をこつこつと積み重ねていくしかないですよね。


施工技術や施工管理能力を粛々と磨き続けることなど信頼を積み重ね既存のお客様には引き続き御贔屓にしていただくことを心掛けること、新規のお客様の開拓を頑張ること、既存メニューに関連するサービスの提供等で追加の売上をあげていくこと等など、建設業だけではなくどの業界でも共通している話しのように思います。
 

(Y点)x1純支払利息比率のまとめ

 x1純支払利息比率は経営状況分析Y点はもちろん、経審総合評定値P点にとっても中小建設会社において非常に重要な評価指標です。


x1純支払利息比率の数値を改善するには、計算式のうち支払利息の金額を小さくしていくことが最もインパクトがあります。


P/L(損益計算書)の支払利息の中に純粋な支払利息以外の金額が含まれているなら、それを別に掲示することでx1純支払利息比率の数値は短期的に改善されるということでした。


中長期的にx1純支払利息比率を改善していくには、できるだけ借入金を減らしていきましょうということと(借入が減る分、利息の支払いも減ります)、借入をするにしても低金利で融資してもらえるように金融機関との信頼関係を地道に築いていきましょうということですね。


借入金を減らしていくことについては具体的に、例えば保険積立金を崩して借入金の返済に充てるとか、固定資産を整理し処分できるものは換金して借入金の返済に充てる、定期預金など固定性の預金を解約して借入金の返済に充てる、出資者を募るなど増資をし得た資金で借入金の返済に充てること等々です。


ちなみに、これらは上手に金融機関とコミュニケーションを取りながらやっていかないと、金融機関側としては繰り上げ返済されることを嫌いますし、定期預金も解約されたくはないでしょうから、自社の経審における戦略上どうしても必要な対応であるなど丁寧に説明していくことが大事になってくるでしょう。


低い金利で融資を受けることについては、会社の業績や財務内容を良くしていき、金融機関とは定期的にコミュニケーションを取るなど良好な関係性を作っていくことです。


コロナ禍の融資環境下ではやり易かったのですが、低利融資への借り換えをしてもらうこと等もありますね。


補足ですが、利息を下げてもらうこともそうなのですが、複数の借入金を1本化して返済期間を延ばしたり据え置き期間を設けたりしてもらうことは資金繰り改善にも効果的です。


以上になりますが、まだx1純支払利息比率の自社の数値に改善の余地があるのなら、上に挙げたような対応を検討してみてください。


もちろん、金融機関とのお付き合いは経営上とても重要なので、その点はくれぐれも慎重に進めてもらえればと思います。



※こちらの記事は2022年5月の記事になります。経審における評価指標の内容等は随時変更されていきますので、ご自身で最新の内容の確認をするようにお願い致します。また、経営状況分析Y点の8指標もそうですし、経審P点総合評定値のX1 X2 Z W点もそうですが、各評価指標は他の評価指標と互いに影響を与え合うことがありますので、1指標だけでなくP点総合評定値全体でどういう結論になるのか意識しながら各評価指標の対応を検討していきましょう。
 

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